2013年9月17日火曜日

風立ちぬ。

「風立ちぬ」の感想を書いておきたい。
内容については各々の思いもありましょうが
絵についてのみ書く。

最後まで泣かなかったです。
泣かなかったが、オープニングから涙腺が
寸止め状態で、それがエンディングまで続いてた。

画面のなかで、どうどうと流れる宮崎さんのアニメーションの
力にどうしようもなく感じ入ってたのです。

画面の構図がさりげないけどすごい。
二郎が図面に向かいながら椅子を引くアオリの画とか
夢の中で離陸する巨大飛行機の波打つ機体とか
「構図が大きい」んであります。
宮崎さんの画は「おおきい」んであります。

ハウルからはじまった宮崎さんの線の質の変化は
ポニョではじけた感があります。
あの波の線。
うねる波の線をポニョが駆け巡るあの高揚感。
「風立ちぬ」での風の線。

以前はシンプルな線でのリアルを指向してたと思うんですが
ポニョからは「作家性」のようなモノを隠さなくなった気が
します。
端的にわかりやすいのは涙の線でしょうか。
ありえない大きさの涙の粒が、より素直に
感情に寄り添ってる気がしました。

離陸する寸前の飛行機に伝わるトルクが
その機体を一瞬ふくれあがらせる時の描き方も
真骨頂です。
CGでも実写でも表現できないそれこそが
アニメーションのちからです。

線のいっぽんいっぽんが以前より太いのですが
それがうねるようにアニメーションする時の
手触りというか、質感がなんともいえない。
おどろくほど省略を進めた線もある。
それでも豊かなのが宮崎駿の線だと思う。

描かれてきた内容については語る言葉を持ちませんけども
やはりこと絵に関しては、宮崎駿の天才にもちかい域を
存分に感じる事ができました。
至福の時間でした。
ありがとうございました。

あ、庵野さんの声についてだけ。
第一声でいっしゅん感じた違和感は、それこそ
一瞬だけで消え、あとはただの堀越二郎の声でした。
知り合いだからこそ気になるかなーと思ってましたけど
杞憂でした。淡々とすばらしかった。