2015年10月28日水曜日

追悼 生頼範義。


一番最初に生頼範義の絵を見たのはいつだったか。
意識したのは覚えてる。平井和正の「狼男だよ」のカバー。

初めて原画をみたのは高校2年のときに東京浅草で開催された
SF大会の会場に展示されていた絵だ。
小松左京の「果てしなき時の流れに」だったかなあ。
想像してた以上に小さい絵で、その緻密さにのけぞった。
プロの仕事をまじかで観た最初でもある。

月刊プレイボーイとかに掲載されてたショートホープの
モノトーンの絵はものすごかった。

「オルカ」とか「メテオ」とかギラーミンの「キングコング」
の映画ポスターは、その中身の映画よりかっこよかった。

「スターウォーズ 帝国の逆襲」の世界版ポスターを
描かれたときは、凄いモノは日本だろうがどこだろうが
評価されて世界に出て行けるんだなあと体感した。

徳間書店から出た初の画集は、丁度なんかのポスターの
コンペでめずらしくもらった賞金で特別豪華版を買った。
興奮したが、まったくおなじ内容の本を廉価版で
時を置かず発売された。徳間め!
でもその本はやっぱり素晴らしくて、いまも手元にある。

本屋に行くといつだって生頼範義の絵があった。
とてもひとりで描いてるとは思えない質量の絵がいつもいつも
そばにあった。いつでも生頼範義のあたらしい絵が
いつまでも観られるとどこかで思い込んでたふしもある。

数年前に病を得て絵筆を持てなくなったことを知った時も
あっというまに直って、ふたたび以前をしのぐ絵を描きまくる
ものだと信じ込んでた。

宮崎での初の展覧会の内覧会に光栄にも呼ばれて飛んで行った。
あふれかえる凄い絵にむせかえりつつも
会場で車いすに座った生頼範義をみて胸がいっぱいになった。
画集でみていた自画像とちがって、柔和な表情が印象的だった。
もちろん、声なんかかけられなかったし、紹介してとかも
言い出せるわけもなかった。
あっちは見上げるような高い山で、こっちはせいぜい丘だ。
同じ空間に、一瞬でもいれた事がしあわせでした。

巨星墜つ、という慣用句がこれほど腑に落ちたことはないです。
今までありがとうございます。
どうかどうかやすらかに。


寺田克也